第11曲 ハンガリー風

 この曲は、リスト自身の自画像です

 リストは、1811年、当時オーストリア帝国領ハンガリー王国ドボルヤーン(現在のオーストリア・ライディング)で、ハンガリー人の父アーダム・リストとオーストリア人の母マリア・アンナの間に生れました。
 一般的にドイツロマン派の中に位置づけられるリストですが、祖国はハンガリーとされています。

このリストの国籍や位置づけについては、複雑な出自や作品歴から諸説ある様です。
リストの国籍については一番デリケートな事で、本1冊くらいのスペースが必要とフランク先生はおっしゃいます。ここでは詳しい話
にはふれないでおきます。

Raiding ライディング

「Liszt」というスペルは、もともとドイツ人であった祖父ゲオルク・アーダム・リストが、原名のGeorg Adam Listでは、ハンガリーではリシュトになるので、Zを一字はさんでLisztにしました。
 リストはハンガリーに生まれたハンガリー人でありながらも、家ではドイツ語、勤務中の公用語もドイツ語だったため、母国語はドイツ語(1820年頃からフランス語も学ぶ)ハンガリー語は話せなかった様です。

 リストはハンガリーの民族音楽、特にジプシーの音楽に影響を受け、19曲のハンガリー狂詩曲をはじめ、色々なハンガリースタイルの曲を作曲しています。
 ですがこの頃の作品は、ハンガリーの民族音楽を研究したものではなく、ハンガリー風の作品になります。
 
 この第11曲「ハンガリー風」はハンガリー民族色の強い行進曲です。
 彼がハンガリー市民として認められたいということの証として、ハンガリーの音階(ヘ短調で4番目と7番目が半音上がっている)で書かれています。
 冒頭のsecondoパートに現れるリズムは大変力強く、インパクトがあります。

 中間部はリストの音楽の功績をたたえる、華やかで男らしいファンファーレが鳴り響きます。「eroico」(英雄的な、偉大な)と書かれており、大きな建物を建設していくかのような盛り上がりを見せ、その後行進曲のメロディーがユニゾンで高らかに奏されます。
 カロリーネはリストの音楽の功績について、次のコメントを残しています。
 「He who threw the music much further into the future then Wagner」
 リストの音楽は未来の音楽へと繋がっていく、でもワーグナーは今だけのものだ。

 予想される勝利の上昇とは対照的に、深い秋に下って行くコーダは、リスト自身の経歴についてのコメントを思い出させます。このコメントはリナ・ラマンがリストのバイオグラフィーをまとめるための最初の面接の時に聞きました。
 「A ship-wrecked man stands in front of you」
 打ち砕かれた男が、あなたの前に立っています。
 若い時に一世を風靡したリストが、晩年の自分の事を「打ち砕かれた男」と語ったのです。

 このコーダはsecondoのソロで力強く奏され、終止します。

 この曲は終始、男性的で力強い曲です。
 seconndoパートはもちろん、primoのパートにもSecondoに負けないパワーが求められます。
 リストとダニエラはどんな演奏をしたのでしょうか。
 そしてリストは最後のソロをダニエラの隣で、どんな気持ちでどんな風に演奏したのでしょうか。 

 それでは、第11曲「ハンガリー風」聴いてみてください。

 2021年10月31日 三和レコーディングスタジオ録音

 Primo:澤村美桜子
 Scondo:リヒャルト・フランク

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