“Angiolin dal biondo crin “「金髪の髪の天使」は、1838年リスト27歳の時、当時同棲していたマリー・ダグーとの間に生まれた長女ブランディーヌのために書いた子守歌です。
リストはピアノ音楽の巨匠として有名ですが、交響詩や宗教音楽をはじめ、ピアノ音楽以外にもたくさんのすぐれた作品を残しています。
歌曲も70曲くらい作曲しており、改稿も含めると100曲ほどあるとも言われています。この作品は、そんなリストの歌曲第1作です。
作詞は リストの友人のイタリアの詩人チェザーレ・ボチェッラ Cesare Bocellaで、イタリア語で書かれています。
バルカローレのようなゆったりとしたリズムにのせて、前半は3歳の愛娘ブランディーヌへの愛、後半はそのお母さんであるマリー・ダグー夫人への愛が、優しくそして美しく歌われます。
1838年に作曲されたこの歌曲は、のちにいろいろ改訂され1856年に改訂出版されたものが、今日よく演奏されている様です。
そしてこの曲はリスト自身によってピアノ編曲もされています。
ピアノ版では、リストの優しさを感じさせる美しいメロディーは、まずは左手で歌われます。低音のメロディーはお父さんが歌う子守歌でしょうか。
続いてこのメロディーは、5連符のアルペジオにのせて歌われます。シンプルなこのメロディーをピアノで演奏すると、少し単純になってしまいますが、5連符と絡むことで深みが増し、感情が入ります。この複雑な絡みは、最愛の娘への愛情と、愛人との間に生まれた娘は、マリーの家族からもパリの高級社会からも祝福されないという重荷、という複雑な思いから来ているのかもしれません。
その後、リストらしい華やかなパッセージで盛り上がってクライマックスを迎え、カデンツへと繋がっていきます。カデンツのあとはまたゆったりとしたバルカローレに戻り、ゆりかごでブランディーヌが眠るように静かに終止します。
このリストの愛情あふれる美しい子守歌は、今でも男女ともによく歌われ、YouTubeでもたくさんの動画が公開されていますが、ピアノ版はあまり知られていない様です。
“Angiolin dal biondo crin “「金髪の髪の天使」のピアノ版、心を込めて演奏してみましたので、ぜひ聴いてみてください。
リストとマリー・ダグー伯爵夫人、愛娘ブランディーヌについては、リストの「クリスマス・ツリー」第9曲「夕べの鐘」のページでも解説しています。
ぜひ合わせて読んでみてください。
「夕べの鐘」のページはこちらからご覧ください。
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