リストのピアノ曲と有名で人気の高い「愛の夢」ですが、原題は「Liebesträume-3 Notturnos für das Pianoforte」3つの夜想曲《愛の夢》(S541)、 3曲から構成されるピアノ曲です。
Notturnos ノットゥルノ(イタリア語)は Nocturn ノクターン(夜想曲)の事です。ノクターンはロマン派の性格的小品で、19世紀には市民のピアノ愛好家の間で大流行していました。リストの「愛の夢」もそんな流行に乗って書かれた3曲からなる小品集ですが、ピアノの巨匠らしく即興的なカデンツァがあるのが特徴です。
日本でよく知られている「愛の夢」は、第3番「おお、愛せる限り愛せよ!」です。
この3曲は、もともとはリスト自身の歌曲をリスト自身がピアノ編曲したもので、歌曲とピアノソロ用の2つの版が、1850年に同時に出版されました。
リストはピアノソロ用では3曲全て、歌曲の歌詞を楽譜の冒頭に掲げて、ピアノソロでも詩の内容を意識することが重要と示されています。
「愛しうる限り愛せよ」は、ドイツの詩人フェルディナント・フライリヒートの拾遺詩集「束のあいだで」の中の有名な詩です。タイトルがないので詩の冒頭行で呼ばれています。もともとは10連からなっていましたが、リストはその4連だけを使って歌曲を作曲しました。
「愛しうる限り愛せよ」と熱烈な愛の歌のように感じますが、10連すべて通して読んでみると、詩的リアリズム作品だとわかります。
リストの弟子であり秘書も務めたアウグスト・ゲレリッヒが、最晩年のリストのマスタークラスのレッスンを受講し、そのレッスンの様子を詳細に日記に残しています。
その記載は下記の通り
「ノクターン第3番ではかなり速めのテンポを強く要求した」
「愛したい限り愛するなどということは、たいていそんなに長くは続かないからもう少し軽はずみな感じで弾いてください」
「私がここで作ったのは、全く軽率な物語なのです。道化芝居をハープでとてもかわいらしく演じるのです」
リストもこの曲を熱烈な愛の歌ではなく、やや皮肉のこもった微笑ましい愛情の裏返しとして解釈していたと考えられます。
冒頭から美しいメロディーが現れ、華麗なカデンツを挟みながら、巧みな転調を繰り返しながらクライマックスを迎える構成、ついつい悠然としたテンポで感情たっぷりに演奏したくなる第3番ですが、リストのアドバイスを心にとめて、私なりに演奏してみました。
ピアノソロ「ノクターン第3番」ぜひ聴いてみてください。
こちらは歌曲版エレキギター&ピアノのデュオの演奏です。
ギターはフランスのギター職人Gérard Defurne氏製作のエレキギター「Ibrida」を使用しています。
特別に注文して作っていただいたギターで、おそらく日本にはまだ1本しかないと思います。
ヴィブラートやトレモロ、大げさなテンポルバートはいっさい使わず、ギターの美しい音色を生かした演奏を心がけました。
画像は演奏シーンは使わず「雪が溶けて、花が咲き、鳥が歌う」という日本の美しい春の訪れの風景、宇治の風景、アルペジオミュージックスクールの写真をスライドショーにしてみました。
エレキギター:磯部寛樹・ピアノ:磯部太美枝・写真:豊永弘子
ぜひご覧ください。
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