新しいブログで最初に紹介する作品として選んだのは、リストのピアノ組曲「クリスマスツリー」です。
原題はWeihnachtbaum (Christbaum又はTannenbaum)、フランス語ではArbre Noël、英語ではChristmas tree になります。
常緑植物を飾る伝統は、古代美術までさかのぼります。
クリスマスの時期にもみの木を飾るのは、ドイツ語を話すヨーロッパ、特にもみの木が豊富にある南ドイツです。
クリスマスツリーについての最も古い記録は、1419年ドイツのフライブルクでパン職人がツリーを飾ったのが最初とされています。
1605年エルザス地方のシュトラスブルグ(当時はドイツ領で現在フランス領)の家庭で、クリスマスの時期にもみの木を森から持ってきて、りんごやワッフル、金箱やお菓子で飾り付けをしたなど、1600年代になるとドイツ各地で記録が残されています。
1800年頃にはベルリンにも伝わっています。
この伝統は、最初プロテスタント教徒の家庭で行われていましたが、カトリック教徒の家や教会でも行われるようになり、のちにドイツ移民によって世界に広められていきました。
ゲーテは1774年、最初の小説「若きウェルテルの悩み」で、E.T.A.ホフマンは1816年おとぎ話「くるみ割り人形とねずみの王様」で、チャイコフスキーはロシアで、この伝統を紹介しています。
1840年、ヴィクトリア女王とドイツ出身のアルバート公に初めて王女が誕生した年、ウィンザー城に家族のツリーが飾られました。
数年後、ツリーを囲むロイヤルファミリーの様子が新聞で紹介され、ツリーを飾る習慣がイギリスに定着しました。そしてそこからもアメリカに、そして世界にも紹介されました。
この時のクリスマスツリーは部屋の机の上に載る大きさでしたが、今では家の外に飾られる大きなツリーも各地で見られます。
クリスマスツリーを飾るまでの様子を見てみましょう。
森で切り取られたモミの木は、クリスマスマーケットで買う事ができます。
クリスマスマーケットはドイツ、オーストリアの都市の広場で行われるイベントです。
夜が長く天気の悪い冬の呼び物として定着していましたが、ヨーロッパ全体、世界中の多数の国にも広まり、アドベントの4週間、各地で開催されています。
もみの木を車に積んで帰ります。
生木のツリーはスタンドに立てて飾ります。
水やりができないので、2週間くらいするとモミの葉っぱが落ちて、家の居間が大変汚れてしまうそうです。
クリスマスプレゼントは、美しく飾ったクリスマスツリーの下に置かれます。
リストのピアノ作品「クリスマスツリー」には、2つのパートがあります。
前半の第1〜8番は、クリスマス行事に関する音楽、後半第9番〜12番はクリスマスツリーの下に置かれたリストから家族へのクリスマスプレゼントのような、家族の肖像画です。
愛娘ブランディー、愛人のマリー・ダグー夫人、カロリーナ・ビットゲンシュタイン侯爵夫人、そしてリスト自身へのプレゼントが描かれています。
この考えについては諸説ある様ですが、フランク先生がこのように考えておられる意味は、作品の紹介の中で書いていきます。
組曲「クリスマスツリー」はベルリンで出版され、全てのタイトルはドイツ語で書かれていますが、ラテン語のクリスマスソング、プロバンス語のクリスマスソングがあり、ヨーロッパの文化の複雑さを示しています。
そしてリストは全ての文化を上手く取り入れ、1つの作品にまとめています。
私がこの「クリスマスツリー」を初めて聴いたのは、フランク先生が会長を務めておられる、リスト協会主催のコンサートです。
そのコンサートは、もう30年以上前、鴨川の辺りにあるドイツ文化センターのこじんまりした会場での開催でした。それが日本での「クリスマスツリー」の初演だった様です。
演奏と合わせてスライドが映し出され、和やかな雰囲気の中のピアノの響きはとても美しく、初めて聴くメロディーも心地よく、心に残るコンサートでした。
当時の貴重なプログラムとコンサートの写真を、フランク先生が見せてくださいました。
コンサートの様子が懐かしく思い出されます。
今ではこの「クリスマスツリー」の楽譜は、ソロ用、連弾用ともにネットで買う事ができましたが、この時フランク先生は、アメリカの議会図書館から楽譜を取り寄せられたそうです。
アメリカの議会図書館から取り寄せて使っておられた楽譜 4手連弾版
私が購入した楽譜
ヤマハ出版 ムジカ・ブタペスト出版
ムジカ・ブタペスト(ハンガリーの国営出版社)4手連弾版
昨年2020年は、新型コロナの感染防止対策のため、教室の発表会はホールやライブハウスでは行なわず、各自の予定に合わせて仕上げ、ウェブ上で発表する『2020年ウェブ発表会』を開催しました。ピアノソロ、ピアノ連弾、バンド演奏のなど、いろいろな曲をいろいろな編成で演奏して録画し、ウェブ上で発表しました。
楽しそうに演奏する生徒さんに刺激され、私もウェブ発表会で講師演奏をしたいと思いました。
この機会に40年近くご指導いただいているフランク先生と、心に残っている連弾作品「クリスマスツリー』を演奏してみたいと思い、先生にお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。
最初は第2番、第6番、第7番、第10番を勧めていただき練習を始めましたが、作品を知れば知るほど、全12曲を演奏したいと気持ちが高まりました。そこで、1年かけてじっくり勉強し、次の年のクリスマスに仕上げるという計画に変更する事にしました。
そしてフランク先生にこの作品について、多方面からご指導いただき、またたくさんの貴重な資料などをお借りして、作品への理解を深めていきました。
「クリスマスツリー」より 第1、4、9、10曲を演奏
Ernst Burger
著者はErnst Burger リストの生涯と作品が、1年ごとに書かれています。
大きなサイズの本で、写真用紙の様な紙質なので、写真も大変きれいです。
そして2021年10月「クリスマスツリー」全12曲を、フランク先生にsecondoパート全12曲の演奏をお願いして、大阪の三和スタジオにて録音しました。
primoは私を含めた6人が演奏しました。
磯部太美枝 澤村陽菜佳 澤村美桜 奥村奏美 稲垣杏花 四方萌香
では、このように取り組んだ、連弾組曲「クリスマスツリー」を紹介していきたいと思います。
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