ショパン=リスト「6つのポーランドの歌」より 第1番 乙女の願い

 ショパン=リスト「6つのポーランドの歌」より 第1番 「乙女の願い」は、愛人カロリーネ・ヴィトゲンシュタイン伯爵夫人の1人娘マリーに捧げられました。

カロリーネとマリー
マリー・ツー・ホーエンローエ=シリングスフェルスト
(1837年〜1920年)

 カロリーネと夫ニコラウスの間の1人娘であったマリーは、生まれてからずっと母に連れられて、リストと一緒に暮らしていました。13年間の同居生活をおくったリストとカロリーネのもとで、マリーは少女から乙女へと成長していきました。
 そんなマリーに贈られた「乙女の願い」は、ショパンの歌曲をリストがピアノ編曲したものです。
 
 「ピアノの詩人」と呼ばれるショパンですが、歌曲も19曲残しています。ショパンの歌曲はもともとプライベートなもので、存命中は公開されたり誰かに献呈されてりすることはなく、ショパンの死後に、友人であったユリアン・フォンタナによって1857年に出版されました。
 最初は16曲、後に1曲追加して17曲の曲集、共通のテーマはなくばらばらですが、どの曲にもマズルカやポロネーズのリズムや民謡の旋律が使われており、ショパンの祖国への想いが伝わってきます。

 リストはこの全19曲の中から6曲をピアノ編曲し、1860年に「6つのポーランドの歌」として出版しました。
 第1曲「乙女の願い」は1929年に作曲されたショパン最初の歌曲です。原曲のタイトルは「Życzenie願い)」作詞はショパンの友人ステファン・ヴィトヴィッキです。

 Życzenie 願い 作詞 Stefan Witwicki(1801−1847)

 リストはこの歌曲の編曲を1857年に始めています。
 この曲をリストからおくられたマリーは、1859年ホーエンローエ=シリングスフェルスト家の候子コンスタンテンと結婚しました。この歌詞のような可愛らしい乙女の気持ちで、幸せな結婚をしたでしょうか。

 リストはピアノ編曲によって、この歌曲をテーマと3つの変奏にしました。そこには、歌う乙女・マリー、超絶技巧のピアニスト・リストとオーケストラが登場します。とても内容豊かな素敵な作品です。

テーマ
華やかなピアニストのパッセージに始まる前奏からショパンの歌曲につながり、乙女が歌います。
VaruanteⅠ
ピアニストがルバートで歌います。
Varuante
ピアニストがショパンの練習曲作品25−2を思わせるパッセージで魅了します。
VruanteⅢ 
オーケストラも加わり、曲はクライマックスを迎えます。
コーダでは第1、第2の変奏の要素にポリリズムも取り入れられて、華やかに終止します。

ピアノの詩人ショパンとピアノの魔術師リストによるステキな作品、上記のイメージで楽しく演奏しました。
ぜひ聴いてください。

2022年10月6日 三和レコーディングスタジオにて録音

 リストとマリーの母カロリーネについては、「クリスマス・ツリー」第12曲「ポーランド風」のページでも解説しています。
 ぜひ合わせて読んでみてください。
 「ポーランド風」のページはこちらからご覧ください。

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